オリーブの花より祝福を

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 ロイドという少年は殺し屋だった。  ロイドがその依頼のことを聞かされたのは、つい昨日のことになる。 「爆弾?」 「そうらしいな」  興味なさげに言って、ロイドを雇っている雇い主はオリーブの花の絵が描かれた手紙をロイドに渡す。  その手紙に書かれていた依頼の内容は、大まかに言ってこうだった。  明日の夜発車する寝台列車に、エドワー・ジョンソンという元革命家が乗っている。  列車の一車両分を貸し切っているそいつは、どうやらその列車に爆弾を仕掛けるつもりらしい。見た目は小さいが、列車ごと爆破出来るような爆弾だ。  だから、その爆弾が爆発する前にそいつを殺して爆弾を止めて欲しい。 「そんな、子供の妄想でもあるまいし……」  手紙を読み終えて思わずそう呟いたロイドに、雇い主は鼻を鳴らす。笑ったのかもしれない。 「これ、確証とか動機とか、そういうのはないんですか? あと、爆発する時間」 「さあな。お金は振り込まれてたからイタズラではないだろうが」 「そういう列車は本当にあるんですか?」 「ある。そいつが貸し切ったのは五号車だな。他の乗客は普通の一般人で、偉い奴はそいつぐらいだ」 「その、革命家しか偉い人の乗ってない列車で、革命家が爆弾を仕掛けるんですか? 訳が分からないんですが」 「そんなことは知らない。まあ、どいつかは、貸し切ってる車両に行けば分かるだろ」  ロイドはあからさまに不満そうに眉をひそめる。それを見た雇い主が「何か文句でも」という目で見てきたので、ロイドは首を横に振った。 「エドワー・ジョンソンとは……」 「数年前、近くの街で内乱が起きた。いや、革命か。血を血で洗うようなドロドロとした奴だ。結果的に革命軍が勝って、その街を元々支配してた貴族たちは全員死んだ。知ってるだろ?」  それは確かめるような言葉だったが、むしろロイドはその口調から知っていても知らなくてもどうでもいい、と言うようなニュアンスを感じた。だから本当はよく知らなかったが、「はい、まあ」と曖昧に首肯する。 「その革命の首謀者だ。ホントかガセか知らないが、まあ爆弾を持っていてもおかしくはないし、そういうことを起こしてもおかしくはないな」  よっぽど人殺しが好きなんだろ。  雇い主はそんな言葉で締めくくって、ロイドをその場から追い出した。
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