オリーブの花より祝福を

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「……爆弾は何処に?」  「これ」そう言うと男は子供のように笑いながら、傍らに置いていた箱を軽くつついて見せた。  それは両手で持ち上げられるぐらいの大きさの、何の飾り気もない白い箱だった。小さいというほどでもないが、大きいというほどでもない。あの中に爆弾が入れられていても、まあおかしくはないだろう。 「……あなたより偉い人の乗っていない列車で、あなたが爆弾を仕掛けるから、あなたを殺して欲しいとあなたが頼むんですか。狂ってますね。それに茶番だ」 「君、中々口が悪いね。でもさ、偉い人っていうのは誰が決めたんだい? この列車には、僕より殺す価値も、生きる価値もない人しか乗っていないのかな?」 「……いえ、そうですね。あなたも、他の乗客も、確かに命の価値は同じかもしれない。でも、あなたが一番殺す理由があるのは確かでしょう」 「そうだねえ、僕色んな人から恨まれてるからさ」 「笑って言うことですか?」 「笑わずに言うことかな?」  ロイドは嫌そうな顔をする。それを見て、男はまた笑った。 「……あんたの自殺につきやってやる義理はない」 「でも、僕を殺さないと爆弾は爆発するんだよね」 「爆弾を止めて下さい」 「嫌だけど?」  埒が明かない。男は笑うばかりで、何を考えているのか一向に見えてこない。ロイドは探るような目で男を見て、また口を開く。
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