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男は墓地の前にバス停ポールを置いた。
「思ったんですけど持って歩くより、斜めにして、土台を転がして運んだほうが楽じゃないですか? せっかく丸いんだから」
「転がる人生に光はささないよ」
意味がわからなかったがとりあえず無言で頷いた。
「しかし疲れたな」
男はその場に腰を下ろた。
「こんなことするからですよ」
「だな。あとは任せた」
「僕はやらないですよ」
「頼むよ、お前しか頼むやつしないんだよ」
「知らないですよ」
「しかしバス来ないな」
「来るわけないですよ、本来のバス停じゃないんですから」
「スタート地点が決められているなんて嫌じゃないか。俺のスタートは俺が決めたい」
「車使えばいいじゃないですか」
「俺、免許持ってないんだよ」
「知らないですよ」
「とりあえず、あと5分待ってバスが来なかったら、諦めるか」
「そんなことより元の場所に戻したほうがいいですよ」
「とやかく言わずにとりあえずあと5分待とうぜ」
男はそう言うと、仰向けになった。もう立ち去ろうかと思ったが、ここまできたのだからと僕もあと5分待ってみることにした。
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