六枚札

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 表彰式、及び、閉会式を終えたあたしたちは帰路に就いていた。あたしの胸には金メダルが輝いている、優勝カップと表彰状は観戦に来ていた両親に渡した。瑠璃の胸には銀メダル。ちょっとしたペアルック気分だ。  あたしたち競技かるた部の三人はいつもの公園でちょっとした打ち上げを開いていた。この寒空の下でとは思ったが、部活帰りのいつもの恒例行事気分でジュースを呷るのであった。ジュースを半分飲み終えたところで美幸が突如ベンチよりスッと立ち上がる。 「ちょっとおトイレ、大会始まってからずっと行ってなかったし」 美幸は慌ててトイレへと駆けていった。その刹那、瑠璃があたしの目の前に立ちはだかる。 「倉持、ちょっといいか? 話、してえんだけど」 「何よ、まだジュース飲んでるんだけど」 「いいから」 瑠璃はあたしに立つことを促した。何なのだろうか。あたしたちはベンチの前にお互いに立つ形となった。 「まず、今日はおめでとう」 あら、今日はやけに恭しい。 「いいえ、どういたしまして」 「この一年、俺を倒すために頑張ってきたんだよな」 「始めに言ったでしょ。次はあんたに勝つって。あたしは負けず嫌いなのよ」 「鬱陶しいやつに目つけられたって思ってたよ。友達に聞けば、お前は『おじょー』だし。俺、団地暮らしだからさぁ、こういった金持ちには見下されていると思ってさぁ、あんまり好きじゃなかったんだ」 被害妄想に近い偏見ね…… こういう風に見る心無い人もいるとは思うけど…… 「お前もこの類だと思ってた。だから俺にもつっかかってくるんだなって。けど、お前、そんな感じが全くしない。その辺歩いてる女の子と変わりがない」 それは馬鹿にされているのか? そう言うとその辺歩いてる女の子に失礼か。 「あのババアにかるた部に誘われた時は面倒くさいと思った。しつこいからしゃーなく入ったけど、すぐにやめるつもりだった」 合宿まで連れてって貰っておいてババア呼ばわり…… 三室先生が聞いたら泣くよ。教師を影で悪く言うのは小学生の常か。中高大になってもそれは変わらなそう。 「お前が入ってきて、またしつこくつっかかってくるし…… お前、俺のストーカーか何か?」 一度自分を負かした相手を追いかけて部活まで入る。傍目から見ればストーカーに見えるかもしれないし、追いかけられている本人からしたら怖いとしか思えないだろう。しかし、あたしからすれば借りを返すためで…… それをストーカーと言うのか。ストーカーは本人に自覚が無いと言うのは本当かもしれない。 「で、一年ずっと一緒にいたわけだ。お前とは毎日かるたやってたし、なんだかんだで一緒にいるようになって、お前のこともよく知ることが出来た」 あたしも瑠璃のことはこの一年でよく分かった。お互い様だ。 「で? さっきからダラダラとこれまでのこと話してるけど、何が言いたいの?」 あたしは煽った。いきなり何でこんな話をされているのかがわからなったからだ。こんな一月三日の寒空の下で何を羽冠瑠璃の独演会を聞いているのだろうか。しかし…… 美幸遅いなぁ、どこのトイレに行っているのか。公園のトイレは汚いから近くのコンビニのトイレにでも行ったのかな? 「つっかかってくるお前はウゼェ。だけどな、一緒にいるだけで楽しいんだよ。一緒にかるたやるのは特に楽しい」 「これはどうも、あたしとしてはあなたに勝ちたいって一心だったんだけどね。楽しんでもらえてなにより。一緒にゲームやる友達みたいな意味で言ってるんだよね?」 「違うよ! そんなんじゃねぇよ! あーめんどくせ! 今日お前に負けて、初めて気がついたことを言うよ!」
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