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「何に気がついたのよ」
「好きだってことだよ! お前…… いや、美子とかるた競ってるうちに、いや、一緒にいるうちに好きになっちまったんだよ! 恥ずかしいから何度も言わせんな!」
人から好きだと言われて嬉しく思わない人はいないだろう。ただし、因縁の相手を除く。
あたしにとって瑠璃は因縁の相手、それ以上でもそれ以下でもない。その因縁は今日絶たれた! それだけの話よ。それを思うだけでまたあの胸のモヤモヤが…… いや、いきなり名前を呼ばれて胸が熱くなったのだろう。いつも「お前」とか「倉持」とか呼ばないやつがいきなり名前呼びになれば照れて胸の一つも熱くなる。
「いきなり何よ…… あたしにとってアンタは因縁の相手でそれだけ。そんな人に好きと言われても困るだけよ!」
「え? 俺、対象外? 一年一緒にいたのに? 酷くね?」
「知らないわよ! あたしは今日であんたとの関係は終わりでもいいくらい!」
「一勝一敗のイーブンじゃないか。勝ち越したくね?」
「あなたに負けた借りは今日で返したの! はいさようなら!」
「男一匹が必死に告白してるのに…… 駄目なのか?」
必死に告白されてもあたしにその気がない。そこに必死さがあろうとなろうと関係ない。
「だめ」
「何だよ、フラれたのかよ。美子さぁ、他に好きなやつでもいるのか?」
「いないわよ」
「ならなんで!」
「だからさぁ…… アンタとは一年前に負けた借りがあるだけの関係だったの。その借りを返しただけ」
「なに? 友達ですらなかった?」
「友達って言うよりは…… 強敵と書いて強敵と呼ぶ感じだったかな。部活中も考えていることはアンタを倒すことだった」
「なんだよ…… それ……」
「それに付き合うにしても…… あたし、もうすぐこの市出てくし、下手したら卒業式終わったら会えないかもよ」
「おい、お前の受験した学校って、ここから通うんじゃないのかよ!」
「学生寮あるから。家出てくし、この市にもなかなか戻ってこれないかもしれない」
「もう市民かるた大会すら出ないのかよ……」
「アンタを倒しちゃったし、もう出る必要性も無いでしょ?」
「そっかぁ…… ってことはかるた、やめちまうのか?」
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