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美幸は小学校入学当時、引っ込み思案で誰とも話すことなく机で児童書を読んでいるタイプの子だった。幼稚園の卒園と共にこの城南市に引っ越して来たことで人間関係のリセットを余儀なくされ、幼稚園の頃の友人が誰もいない中に放り出されてしまった。自分から話しかけてくるタイプではなく、なかなか友達が出来ずに児童書の世界に閉じこもるようになってしまった。あたしは既に同じ幼稚園の子同士でコミュニティを築き、そこから枝となって友達を作ることに成功していた。そんな中、あたしが見つけたのがいつも一人で児童書を読み耽る美幸の姿。後はお決まりのパターンで、あたしが美幸をコミュニティに引き入れたと言うことになる。つまり、あたしは美幸の最初の友達と言うことだ。そこから先は常に一緒の友達となり、親友と呼べる間柄になった。
こうして六年間ずっと一緒だったのに私立中学進学と言う形で引き裂くことになって、あたしはずっと美幸にすまないと考えるようになっていた。
「でも、まだ合格決まったわけじゃないし。落っこちたら地元の市立中学に行くつもり」
「美子だったら絶対に合格するよ…… アタマいいし……」
あたしは塾に行っているわけではないが、家庭教師をつけているおかげで私立中学受験の学力は持っている。塾に行かない理由は「習い事」の時間がなくなるからだ。おそらくだが学力で自力で合格することも可能だろう。それでも地元にある天神様への二礼二拝は欠かさない、来年の初頭には太宰府の本社にも行くつもりだ。
「だったら美幸も受験てみたら? 勉強なら手伝うよ」
「うち、美子の家と違ってフツーの家だよ? 学費が払えないよ」
美幸とそんな話をしている最中、瑠璃の後ろ姿を見つけた。なぜかあたしの心臓はキュンとなり熱くなる。その傍らには新一年生の男の子、肩から腰まで完璧にランドセルで隠れている小さな少年を連れての登校をしているようだった。
「羽冠くんも大変ねぇ、新一年生の世話任されちゃったんだ」
「そっか、昨日の入学式も呼び出されたんだ。大変ねぇホント」
そういえば、あいつは進学先どうするのだろうか? あたしは気になった。瞬間記憶能力者なんてチートじみたアタマの良さを持っているけど…… 暗記系教科以外では役に立たないから成績は普通。普通に地元の市立中学に進学するんだろうな。あたしには関係ない話だけど。
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