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数日後、冬休みが終わり残り三ヶ月の最後の小学校生活を迎えることになった。その初日にあたしがしたことは競技かるた部を退部することだった。
私立中学入学の準備で部活をしている暇がなくなったのだ、夏休みの宿題を思わせる多くの入学前の課題、制服の仮縫いに採寸合わせ、学生寮への体験入寮…… 多忙を極めた。体験入寮や、入学前の説明と立て続けに予定が入り学校を欠席することが増えてきた。フッてしまった瑠璃と顔を合わせないための理由としては最適だ。正直な話、あれから瑠璃とどう顔を合わせればいいかがわからなくなっていた。
部活を辞める時に「籍だけは置いて引退という形にしない?」と三室先生から提案されたのだが、あたしは瑠璃とは居づらいと言う理由を隠し、強い気持ちがあるとだけ三室先生に説明して「退部」と言う形にしてもらった。その後も競技かるた部は小学生名人戦やクイーン戦が控えていたのだが…… 辞めたあたしからすればもう関係のないこと。瑠璃なら小学生名人になるだろう。気にしないことにした。
瑠璃にも美幸にも退部のことは伝えていない。三室先生が二人にあたしのことをどう言ったのかすらも知らない。
美幸は普通に話しかけてくる。かるた部の話を一切しないのが逆に不気味だ。美幸の家に遊びに行き、ウルフィとマックスの散歩をする時にも「ねぇ? かるた部どうなってる?」の一言を言い出すことが出来ないし、美幸もかるた部の話はしない。
瑠璃はと言うと、あの日以降一切話をしていない。席も最後の席替えでやっとのことで教室の端から端と分断されて分かたれてしまった。瑠璃が転校して来た日からずっと隣同士だったのがここに来て途絶えてしまったのだった。
瞬く間に卒業式の日を迎えてしまった。光陰矢の如しとは言うが、この三ヶ月までの多忙さを考えると長く感じた。両親や他のみんなに聞くと、この三ヶ月は極めて短かったという。忙しすぎて時が早く過ぎていくはずなのに、なぜあたしだけ長く感じたのだろうか。
あたしは卒業式が終わるなりに、クラスのみんなに軽く挨拶をした後にさっさと家に帰ってしまった。明日は入寮日…… のんびりとしている暇はあたしにはなかった。
瑠璃にも挨拶ぐらいはしておこうかと思ったが、子供会の卒業記念の食事会に行くとかで同じ町内の子達とさっさと帰ってしまったとのことだった。美幸からそれを聞いても「あ、そう」としか返すことが出来なかった。
こうして、あたしの小学校生活は終わりを告げた。
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