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「すいませんね。うちのキャプテン、まだ頭の中はガキだから」
あたしはその声を聞いて電流が走った。一心同体、一蓮托生のように一緒だった親友の声じゃないか! あたしの親友の大友美幸じゃないか! あたしは三年ぶりに会う美幸の姿を見て胸が熱くなる。
「美幸! 美幸じゃない! 大きくなったわね!」
「あたしら、成長期ド真ん中だから大きくなるに決まってるじゃない。年イチで会う親戚のおばさんみたいな言い方しないでよ」
たしかにそうだ。あたしが最後に会ったのは十二歳の美幸だ。学生寮に入った後は地元に帰ってないので美幸に会えるはずがない。
「なんで近江神宮に? 観光? 修学旅行?」
「決まってるじゃない。近江神宮の下見よ。あたしたち、静岡県の代表だもん。城南高校かるた部」
「かるた…… 続けてたんだ……」
「美子が素直だったらここまで続けることもなかったし、始めからやってなかった」と、男が言う。
「え? 意味分かんないんだけど」
美幸は後ろに下がり、他のかるた部員をずいずいと引っ張る。
「ほらほら、あたしらみたいな邪魔者はフェードアウトしましょ! キャプテンの大勝負を邪魔する権利は無いわ」
美幸は男の肩をとんとんと叩いた。言葉こそなかったが「がんばれよ」と、言っているように感じられた。
今、ここに美幸がいると言うことは…… 目の前にいるこの男はまさか…… その男の肩掛け鞄のチャックには「るり」と描かれたピンクのキーホルダーが付けられていた。
四年前の夏に諏訪湖のSAであたしが買ったものに間違いない。
「まさか、羽冠…… くん?」
「そうだよ! 俺も背伸びたし、成長したしな!」
目の前にいるのは瑠璃だった。三年ぶりに会う瑠璃は背の高いイケメンに成長していた。
その瞬間、久しぶりにあの胸が熱い感覚が蘇ってきた。中学の三年間一度も起こらなかったのにどうして今更! 健康診断の際にも胸に異常はないってお墨付きを貰ったのに! おのれヤブ医者め! 九月の健康診断の際には小一時間説教をしてやる!
「ひ、久しぶりね。元気してた?」
「元気してた? じゃねぇよ! お前この三年なにやってたの? 中一の時からずーっとここで待ってたんだぞ!」
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