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「来年も絶対に市民かるた大会に出て頂戴! あたしがコテンパンにのしてあげるから」
「競技かるたでどうやってコテンパンにするんだよ。かるたを手裏剣みたいに飛ばすのか? えっと、倉持…… さんだっけ?」
また小馬鹿にされた。瞬間記憶能力者なのに人の名前は覚えないのか、覚えられないのか、覚えたくないのか、覚える気すらもないのか。小学生男子の中には女子には一切興味が無いのが多いらしいが、こいつもその類なのか。いずれにせよ腹立たしいことは変わりない。
ここであたしのことを覚えてから帰ってもらいたいものだ。
「次はあんたに勝つのよ! 競技かるたでね! あたしは倉持美子! このすんごくいい頭の中にしっかりと、あんたを倒す女子の名前をしっかりと刻みつけなさい!」
面倒くさいことに巻き込まれてしまった。何より面倒くさい女子と関わってしまった。瑠璃はこう言いたげに鬱陶しそうな顔をしながらその場から去っていった。
あたしは今年一年、競技かるたに本腰を入れることにした。そうでもしないと瞬間記憶能力者を出し抜くことは出来ない。
その日より、あたしと瑠璃の一年が始まる……
と、言う訳には行かない。あたしは単なる女子小学生、中学受験の勉強だってしなきゃいけないし、その下準備として学校の成績も落としてはいられない。一応は友達だっているし遊びたい盛り。残り少ない小学校生活、悔いが無いように過ごしたい。これらと並行しつつ、瞬間記憶能力者を出し抜く程の競技かるたの実力を身に着けなければいけないのか。
楽しくも忙しく辛い一年になりそうだ。
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