おばあちゃんの迎え火

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僕は玄関を入って、すぐに仏壇の方へ行った。 「あんた、どこ行くの?」 「おばあちゃんのとこ」 「もうご飯だよ」 「後ですぐ行くから」 仏壇の前に座った。 仏壇にはおばあちゃんの写真があった。 「おばあちゃんだよね。煙。おばあちゃん、ありがとう」 僕は目を閉じて手を合わせた。 (カタン) 目の前で音がしたの目を開けると、おばあちゃんの写真が倒れていた。 僕はおばあちゃんの写真を元通りに戻したのだが、写真からおばあちゃんが消えており、そこに写っているのは背景だけになっていた。 「おばあちゃん?」 何回写真を見直しても、そこにおばあちゃんはいなかった。 (サッサッサッ) 後ろから誰かが歩いてくる音が聞こえる。 (サッサッサッ) その音は僕のすぐ後ろで止まった。 後ろに、どこか暖かい感じのする気配を感じた。 振り向くと、そこにはおばあちゃんがにっこり笑って立っていた。 「おばあちゃん…」 僕、大きくなった?背も伸びたんだよ。 そう言いたかったが、うまく言葉が出てこず。おばあちゃんを見ることしかできなかった。 「大きくなったねぇ」 おばあちゃんは、去年よりも優しくそう言ってくれた。 「おばあちゃん…」 僕は涙声になっていた。 「こうたのことずーっと待ってたんだよ」 そう言っておばあちゃんは僕の頭を撫ででくれた。 「おばあちゃん、おばあちゃーん」 僕はおばあちゃんに抱きつき、わんわんと泣いた。 「会いたかったよー」 「ばあちゃんもこうたに会いたかったよ」 たくさん言いたいことがあったが、僕は泣くことしかできなかった。 おばあちゃんは泣き続ける僕を抱きしめてくれた。 「ばあちゃん、こうたのことずっと見とるけんね」 うん、うん。と僕はおばあちゃんの胸の中で頷いた。 「お盆はね、来年も、その次も、その次もずーっとばあちゃんいるけん、こっちきんさいね」 おばあちゃんも少し涙声になっているように聞こえた。 「うん。僕、来年もその次も、その次もずーっとくる」 「ありがとうね。こうた。ばあちゃん嬉しいよ」 僕はおばあちゃんの顔を見た。おばあちゃんも泣いていた。 「じゃあね、こうた。おばあちゃん、いくけんね。来年も待っとるからね」 おばあちゃんは、にっこり笑ってそう言うと消えてしまった。 でも、体全体におばあちゃんの温もりは残っていた。
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