0人が本棚に入れています
本棚に追加
僕は玄関を入って、すぐに仏壇の方へ行った。
「あんた、どこ行くの?」
「おばあちゃんのとこ」
「もうご飯だよ」
「後ですぐ行くから」
仏壇の前に座った。
仏壇にはおばあちゃんの写真があった。
「おばあちゃんだよね。煙。おばあちゃん、ありがとう」
僕は目を閉じて手を合わせた。
(カタン)
目の前で音がしたの目を開けると、おばあちゃんの写真が倒れていた。
僕はおばあちゃんの写真を元通りに戻したのだが、写真からおばあちゃんが消えており、そこに写っているのは背景だけになっていた。
「おばあちゃん?」
何回写真を見直しても、そこにおばあちゃんはいなかった。
(サッサッサッ)
後ろから誰かが歩いてくる音が聞こえる。
(サッサッサッ)
その音は僕のすぐ後ろで止まった。
後ろに、どこか暖かい感じのする気配を感じた。
振り向くと、そこにはおばあちゃんがにっこり笑って立っていた。
「おばあちゃん…」
僕、大きくなった?背も伸びたんだよ。
そう言いたかったが、うまく言葉が出てこず。おばあちゃんを見ることしかできなかった。
「大きくなったねぇ」
おばあちゃんは、去年よりも優しくそう言ってくれた。
「おばあちゃん…」
僕は涙声になっていた。
「こうたのことずーっと待ってたんだよ」
そう言っておばあちゃんは僕の頭を撫ででくれた。
「おばあちゃん、おばあちゃーん」
僕はおばあちゃんに抱きつき、わんわんと泣いた。
「会いたかったよー」
「ばあちゃんもこうたに会いたかったよ」
たくさん言いたいことがあったが、僕は泣くことしかできなかった。
おばあちゃんは泣き続ける僕を抱きしめてくれた。
「ばあちゃん、こうたのことずっと見とるけんね」
うん、うん。と僕はおばあちゃんの胸の中で頷いた。
「お盆はね、来年も、その次も、その次もずーっとばあちゃんいるけん、こっちきんさいね」
おばあちゃんも少し涙声になっているように聞こえた。
「うん。僕、来年もその次も、その次もずーっとくる」
「ありがとうね。こうた。ばあちゃん嬉しいよ」
僕はおばあちゃんの顔を見た。おばあちゃんも泣いていた。
「じゃあね、こうた。おばあちゃん、いくけんね。来年も待っとるからね」
おばあちゃんは、にっこり笑ってそう言うと消えてしまった。
でも、体全体におばあちゃんの温もりは残っていた。
最初のコメントを投稿しよう!