「嘘みたいな本当の話」的なエロス

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「私、パワースポット巡りが好きなんです」  その女の子はこんな田舎のバーのカウンターで飲んでいるにしては、ちょっと都会風で可愛いらしすぎる格好をしていた。 「パワースポット?」  その単語には正直興味は無かったが、わざとらしく同じ単語を繰り返し、席を1つ近づける。 「この辺りなんですけど?」  白いブラウスから更に白い細腕を伸ばし、携帯電話を開いて2つ離れた席の俺にその画面を見せようとしてきた「ああ」と、1度遮るような素振りをした後、彼女の隣の席に座り直した。 「何処だって?」  携帯電話の地図アプリの画面はそれ以上拡大しようとすると『NOMAP』と表示される。 「神様の居るところだから地図とか載せちゃ駄目なんじゃない?」 「え?本当ですか?」 「冗談だよ、田舎すぎて地図が無いだけ」  こんな阿呆な冗談を真に受けるようなお嬢さんがこんな南の島に一人旅とは…  何となく興が冷めて席を1つ開けた。 「何で離れるんですか?」  そりゃまたえらく人懐っこい発言だな、それともプライドでも傷付いちゃった? 「あぁ煙草、吸わないでしょ?」  そう言って彼女の反対側に煙をふかす、さっきからトロピカルなカクテルに付いていた傘のおもちゃをクルクル回して遊んでる女の子が煙草なんて吸わないだろうと思っていた。 「私、煙草吸いますよ?」  セブンスターとジッポライターを取り出し慣れた様子で火を付けた、煙を吐く姿が様になっていて、失いかけた興味がまた湧いてきた。 「どうぞ」 「ありがと」  使っていた灰皿を彼女との間に置いて、二人で手を伸ばす、煙草の灰を落としながら微笑む彼女はやけに妖艶だった。  
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