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田舎のバーに最新のヒットチャートは似合わない『田舎者のくせに都会ぶっちゃって』そんな寒い空気が流れる、あの頃の俺は全体的にそんな感じだった。
「連れてってあげなよ?」
「はぁ?なんで俺が?」
マスターのナイスアシストも敢えてスルーのカッコつけ。
「どーせ夏休みだろ?」
「夏休みでも仕事はしてます」
「どーだか?」
「あの?お願いします連れてって下さい」
いつの間にか席は隣同士になっていて、マスターを添えて3人でパワースポットの場所について話が盛り上がっていた。
「大体、俺は行ったこと無いんですけど」
「え?地元なのに行かないんですか?」
「行かないよ、そんなとこ」
詳しく聞くと、パワースポットってのは海岸沿いの崖の下の大岩だそうだが、潮が引いたときだけ現れる社の様なものがあるらしい。
行ったこと…あるわ
中学生位の時に行った事がある、両親にめちゃくちゃ怒られた、少しでも戻るのが遅れると潮に流され、大人でも岩にしがみつきながら戻る羽目になるらしい。
もともとは海の安全を願う社が、1日2回限定のパワースポットになっているようだ、これ以上ごねて若い女の水死体が上がっても寝覚めが悪い。
「分かった俺のポンコツ車で良けりゃ明日の朝10時に迎えに行くよ、ホテルどこ泊まってんの?」
干潮の2時間前なら妥当だろう。
「白浜スイートです」
この島唯一のリゾートホテルだ。
「良いとこ泊まってんなぁ、パワースポット要らないんじゃない?」
「そんな事ありません」
彼女はほっぺたを膨らませ小さな女の子の様に怒っていた。
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