「嘘みたいな本当の話」的なエロス

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 25万で買った中古の軽自動車はかなり不釣り合いな駐車場に停まっていた。 「駐車場までオサレだね」  ハイビスカスの生垣にブーゲンビレアのゲート、高そうなレンタカーに紛れ込んだ色あせた軽自動車に、ワンピース姿の女の子が近づいてくる。 「何だそのかっこ?海っぺりに行くんでしょ?」 「こんなのしか持ってきてないし、大丈夫、下は水着着てるから」 「そんな問題じゃなくて」  ビーチ遊びではなく岩場を歩くのにそんなスカートで…何だこのお嬢さんは? 「ちょっと売店行こう」  磯歩き用の靴でも買っとかないと辿り着けないぞ?  クーラーが効かない車の窓は全開って相場が決まっている、オープンカーでも無いのに彼女の髪がバタバタとうるさい。 「CDとか付いてないの?」 「その前にクーラーだろ」  とは言っても家から職場まで10分かからない、台風や塩害で車なんて直ぐに錆びる、彼女も居ない独り身だとこの程度の車で充分さ。 「ねぇ、昨日は何で声かけてきたの?」  唐突な質問に思わずツバを飲み込んだ。 「ヤレると思った?」  都会の娘はストレートだねぇ… 「…そうだよ、こんな島に女の一人旅なんて傷心旅行かと思うじゃない?」 「だから優しくしてるの?」 「え?」 「ヤレそうだから優しくしてるの?」 「まあ、昨日の夜はそうだったかな、今はそうだな、半々だな」 「何と半々?」 「人命救助」 「はぁ?まさか私が自殺しそうだなんて思ってるの?」 「まさか」 「思い出したんだけど、今から行こうとしてる所は潮が満ちてくると危ないんだ、一緒に飲んだ人が流されでもしたら寝覚めが悪い」  これは本音だ。
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