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「それだけ?ホントにそれだけ?」
横目で見た彼女は不思議な生き物でも見るような目で俺を見てる。
「あぁ、昨日俺がOKしなかったら、タクシー使ってでも来てただろ?」
「まぁそうだけど」
「それで流されたら、寝覚めの悪くなる人がもう1人増えるからな」
「ヤレないからって置いてかないでよ?」
「あ、それ良いな」
「嘘でしょ」
「嘘だよ」
彼女がグーパンチで俺の左肩を殴ってくる、この時ほんの一瞬たけど、この名前も知らない女の子がホントの彼女の様な気がしていた。
「なるほどパワースポットね」
ここに来たのは10年ぶりだろうか、獣道みたいだった細道が広がっている、誰かがナタでもふるったのか生い茂る草も少なかった。
「確か、ここから10mくらい降りると小さな砂場がある、陸地側にちっちゃな社が建ってたはずだ」
結構有名になったのか、かなり踏み固められている感じがした、これならサンダルでも良かったかな、ポケットから煙草を取り出し火をつける、流石に海っぺりで煙草なんて…。
「先に行くよ」
彼女は磯歩き用のシューズを履き、ヒラヒラするワンピースのスカートをパレオみたいに縛り上げて坂道を下っていった。
ちょっとした崖の上に立ち眼下の岩場を眺めていた、キノコみたいな岩もはっきり出ている、完全に干潮の時間だ、2時間ドラマのラストシーンみたいにフーっと煙を吐き後を追うことにした。
坂道を降りて直ぐに異変に気付いた、おかしい?潮が引いてない!
昔来たときは小さな砂場があったはずだ、どう見ても膝下くらいまでの深さがある。
大岩の隙間からの海水は見た目以上に流れが速い、あんなスカート一気に持っていかれるぞ!?
「おーい!?」
「おーいっ!」
カッコつけて名前は聞かないよ何て言うんじゃ無かった…
ちゃんと10時に待ってるから携帯番号なんていらないよなんて言うんじゃなかった…
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