23人が本棚に入れています
本棚に追加
どうやら崇がくず折れた階段の上段側に立っていたらしい彼女は、図らずも彼女の足元に顔を入れる形で振り返った崇の顔面に、天誅の意味を込めてそのおみ足をのめり込ませているらしい。
──理不尽だろっ!! 見たくもねぇよっ!! 大体あんた黒いストッキングに編み上げブーツで膝丈スカートなんだからこの角度じゃ何も見えねぇよっ!! そんな疑いかけるくらいなら最初っからそんな場所に立つんじゃねぇっ!!
心の中ではそんな反論が轟々と渦巻いているが、顔面にかかとがのめり込んでいる状態では何も口にすることはできない。
結局崇は一切反論ができないまま階段に倒れ伏すことになった。
「お前の適当な助言のせいで彼女の恋が破滅したらどうするのだえ? 我が社の名声に傷が付くではないか」
実に雅やかな口調でクレームを入れてきた彼女は、階をしずしずと降りると崇がくず折れた上段に腰を下ろした。
空気の流れで、彼女が優雅に足を組んだことが分かる。
「……俺は、この社には、関係のない人間デス」
「何を言うておるか。お前はこの社の、貧層ではあるが唯一の広告塔なのじゃ。せいぜい励まぬか」
今度は誤解されないように慎重に顔を上げる。
ゆっくり彼女の方を振り返ると、絶世の美貌を誇る少女がニコリと笑ってこちらを見ていた。
最初のコメントを投稿しよう!