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ギュッと抱きしめる腕も力強い声も、久しぶりに触れるものだった。
ジワリと瞼が熱くなる。
またフワリと、頭を撫でる父の手の感触を思い出した。
「……ママ、パパがごめんねって。おゆうはん、いっしょに食べられなくて、ごめんねっ
て」
希美の言葉に、母が弾かれたように顔を上げた。
涙でグシャグシャになった顔で、それでも母は真っ直ぐに希美を見ていた。
「パパね、しろへびさまの、神さまのおにわをつくるおしごとをすることになったんだって。だから、おうちにはかえれないけれど、ここにいるよって。会いたくなったら、みんなでしたみたいにしろへびさまにごあいさつするんだよって……」
不意に母の顔が視界から消えた。
その代わりに体が苦しいほど抱きしめられる。
希美を抱きしめながら、母は無言で何度も頷いていた。
新たに溢れた涙が、また頬を伝っていく。
母に抱きしめられたまま、希美も再び泣いた。
そんな二人を慰めるかのように、やわらかな雨が降り始めていた。
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