お狐様とてるてる坊主 ―祓い屋タタリの事件帳―

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 どうでもいいが二柱(ふたり)とも、ここが異界の(やしろ)ではなく現実の社であると分かっているのだろうか。  現実ということは一般人も来るということで、この会話を一般人も聞いているということで。  色んな威厳とか世間体とかあると思うのだが。 「……あ」  言い争いの終わりが見えないし、一旦自分だけどこかに行ってもいいだろうかと考えていたら、鳥居をくぐって入ってくる人影が見えた。  それが親子連れだと分かった崇は、思わず拝殿の影へ身をひそめる。  綺麗な所作で拝殿まで進んだ母子は、きちんと二礼二拍手を守ると両手を合わせて軽く頭を垂れた。  静謐さと穏やかさ、その両方備えた空気が二人を包み込む。  親子は最後に一礼すると、再び手を繋いで元の道を戻っていた。  二人の間に特に言葉はない。  だが穏やかに交わされる笑みが二人の心の繋がりを示していた。 「まーったく! これだからあれはクソ蛇なのじゃっ!!」
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