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近隣の学校の制服では見かけない真っ黒なセーラー服。
スラリとした足は黒いストッキングに包まれていて、足元は焦げ茶の編み上げブーツ。
今時絶滅した膝下丈のプリーツスカートが良家の子女のような慎ましさを演出している。
そう、そのスカートの下から飛び出た高級座布団もかくやという艶やかな金色の毛並みの尻尾さえなければ、いかにもどこかの御令嬢。
しかしなよやかな腰を硬い階段から守る何本もの尻尾が、艶やかな黒髪から飛び出る三角形の耳が、彼女がただの御令嬢ではないことを無言ながらも雄弁に、雄弁すぎるほどに物語っている。
「そうでなければ、祟るぞえ?」
腰下までストンと落ちる艶やかな黒髪を片手で払いながら、この社の御祭神である金毛九尾のお狐様は妖艶に笑った。
普段は黒に擬態している瞳が蠱惑的な金に光る。
ビョッと飛び出た三角の耳が、何かを招くかのようにわずかに揺れた。
「……御祭神本神が他力本願なくせに、俺が怠けたら祟るとか理不尽以外の何物でもないだろ……」
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