お茶

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クリスティーナは、緊張しながら受話器を取り、 「はい。どちら様でしょうか?」 と、訪問者に尋ねた。 「左近です。小泉君はいるかな?」 その人物は名乗った。 《ハニー》に来訪したことを、目で合図を送ると、 小さく頷いた《ハニー》は、立ち上がり、 居間へと向かう。 それを見た、クリスティーナは、 「どうぞお入りください。」 と言い、玄関へ向かった。 玄関を開けると、2人の男が立っていた。 その顔を見た瞬間、怒りの感情が沸き上がって 「このヒヒじじいにアホボンがぁ~!」 と、怒鳴りそうになったが、なんとか思い止まった。 2人を《ハニー》が待つ、居間へと案内し、 ドアを閉めた。できれば同席したい、 せめてここで話を聞いていたい。 と思うが、まずはお茶を用意しなければと、 台所に向かった。 クリスティーナは、お茶を用意しながら考える。 なんとか《ハニー》を守る方法はないものかと。 そうだ!あの2人が早く帰ればいいのだ! 急いで棚から救急箱を取り出し、中から 手に取ったのは、(下剤)だった。 クリスティーナは子供の頃から、便秘に 苦しめられてきた。便秘薬も服用しているが、 それでもダメな時は、この下剤を使用している。 これをお茶に入れて飲めば、《ハニー》 を言いくるめるどころでは、なくなるはず。 来客用の2つの湯飲みに入っているお茶に、 その粉末を入れ、混ぜはじめた。 お茶を出すだけで、時間がかかってしまった。 3つお盆にお茶を乗せ、台所から居間に向かうと、 (ガチャリ)と居間のドアが開いて、 元会長と元理事長が出てきた。 明らかに怒った顔をしている2人は、 「失礼」と言い、お茶持ち、呆然としている、 クリスティーナの横を足早に通りすぎ、 玄関から出て行った。 「いや~、一気に話したし、緊張してたから喉が渇いちゃったよ。」 気づけば、目の前に立っていた《ハニー》が、 来客用の湯飲みに手を伸ばそうしていた。 「これはダメ~!」慌てて止め、《ハニー》用の湯飲みを手渡した。 不思議そうな顔しながらも、 半分くらい飲んだ《ハニー》が、 「終わったよ」とにっこり笑った。 それはクリスティーナが見た、 久しぶりの《ハニー》の笑顔だった。
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