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それからしばらくすると、「支店長失礼します。少しよろしいでしょうか?」と、午前11時すぎ、お客様も疎らな店内で、酒井君が私の前に立った。
私も(出資金の件がついにきたか)と思い、「どうしましたか?」
と聞くと、
「ご同行をお願いしたいお客様がおります。」
神妙な顔をして言います。
「何か問題でも起こったのですか?」と聞くと、
「はい。少々困った事態となっております。」酒井君は言った。
「分かりました。お客様にお伺いするのは何時ですか?」と聞くと、
「14時にお伺いすることになっております。」
と言い、一礼して自分の席に戻って行った。
私と酒井君の二人は、14時に着くように支店を出た。道中酒井君が、
「ご足労ありがとうございます。今回の件は、もはや私ではどうすることもできず。」と、歩きながら頭を下げた。
「気にしないでください。何かトラブルがあったら、上司が対応するのは当然のことです。」と言い、増田氏の自宅へと向かった。
自宅に迎え入れた我々の前に、増田氏は部屋の奥から、B5くらいの大きさの箱と、円柱形の缶のケースを持ってきた。私はその箱から出てきた通帳と、缶ケースから出てきた印鑑を見て、大げさに驚いた様子を見せ、増田氏へは、必ず私が何とかしますと言い、通帳と出資証券を預からせてもらった。
支店に戻り、出資金を管理する総務部へ連絡し、本件の事例を説明して、
同じ住所に、異なる複数の名前の出資金の名義がないか調べてくださいと
依頼し、3日後手元にその資料が届いた。
(これで必要なものは全て揃った。後は理事長だけだ。)
私は理事長に電話を掛け、相談したいことがありますと話をし、明日お伺いすることを伝えた。
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