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先輩は腕時計を見ると、
「やっべ。休憩時間終わりじゃん! じゃあな、宮嶋。内緒だからなー!」
と、慌てて走っていった。あたしは手を振ってその背中を見送った。
まさか会えるなんて。木崎との補習なんか最悪って思ってたけど、まあ悪くないかも。
先輩と別れたあとは、寂しくなるし後悔でいっぱいになる。
部活頑張ってください、とか、暑いから気を付けてくださいね、とか――よかったら一緒に帰りませんか、とか言えたらいいのに。
「ダメだなぁ、あたし」
「おい」
デリカシーのない声が、またもやあたしの乙女モードをぶち壊す。
げ。振り返ると健斗がこっちを見ていた。あいつ、いつからそこに……。
「十五分たったぞ」
「わ、分かってるってば」
握りつぶした紙パックをゴミ箱に捨てると、あたしは慌てて木崎のあとを追った。
唐突に、木崎がくるりと振り返った。
「な、なによ」
「追試、合格しねーとあの先輩に嫌われちまうかもな」
と、にやりと笑う。
はあああああ? こいつ本当にイヤなやつ! 最低最悪極悪非道!
心の中ではそんな言葉が飛び交っていたけれど、あたしは真っ赤になって口をぱくぱくさせるのが精一杯だった。
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