ぶつかりたい

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ぶつかりたい

幸せを願われるほど、苦しんだ過去がない。 不幸を嘆くほど、傷ついた過去がない。 苦楽がないので、寄り添えるものがない。 私はぶつかりたい。 雑踏を嫌い、 物音ひとつに怯える私は、 ぶつかりたいのだ。 通勤ラッシュの駅、 祝日の繁華街、 人混みは、 ぶつからないように、 流れていく、 私を避けていく人々と、 私はぶつかりたい。 旅行者の引っ張るキャリーバッグ、 先を急ぐサラリーマンのカバン、 仲良く手を繋ぐカップル、 ぶつかれば、 私はみんなと繋がれる気がしていた。 帰りの駅のホーム 電車到着前のアナウンスを聴きながら 私は夕陽を見ていた。 陽光 影 色 光の屈折 音 声 息 雨 ふ り 傘 虹 風 みんな私と ぶつかって みんな私と 繋がって ぶつかりながら、私は
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