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秀は掠れた声で言った。桃野の頬は、熱でもあるみたいに、赤い。そういえば。すっかり忘れていたが、先週の金曜日、桃野は秀に告白した。伝聞じゃなく、目の前で見たから、「らしい」とは言わない。断言する。
放課後、呼び出された秀は、俺を引き連れて校舎裏に向かったのだ。そして、そこにいた桃野に告白された、と。俺は秀の横に立って、桃野が顔を真っ赤にして告白しているのを、ただ眺めていた。秀と誰かが付き合う、というのがピンと来なかったし、そんなことはないだろうと勝手に思っていたのだが。
秀は桃野の告白に頷いた。僕は僕のことを好きな人が好きだから、付き合ってもいいよ、という傲慢な返事だった。おまえ何様だよと俺は呆れ返ったが、桃野は感激に涙していた。学年トップの成績を誇る桃野美希は、実は阿呆だったらしい。忠告でもしてやろうかと思ったが、すぐに思い直した。秀の依存先が増えるのは、俺にとってはいいことだし。秀のことだから、どうせすぐに桃野に嫌われるだろう。まともな人間なら、秀のわがままに振り回されていられない。
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