嘘つき、嘘に溺れる

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 晴れてカップルになった秀と桃野は今、教室の入口のところで中身のない話をしていた。昨日の夕飯の話とか。あんまりくだらないので、馬鹿馬鹿しくなって、俺は先に教室に入った。  しかし。  俺の席、一番後ろの窓際という特等席に、弁当が広げられていた。またかよ、と俺はため息を呑み込んで、自席に向かった。  座っているのは、平川優子(ひらかわゆうこ)。同級生だ。俺が席の前に立つと、黙々と箸を動かしていた平川が、顔をあげてにっこりした。 「おはよ。今日も遅かったじゃん」 「そこ、俺の席なんだけど」 「だって、いなかったじゃん」 「おまえの席は隣だろ!」  俺はびしっと隣席を指差した。が、その机にも弁当が広げられている。桃野のものだろう。いつものことだからわかる。平川と桃野は、俺の席と平川の席を使って、並んで昼食を摂るような仲良しさんなのだ。  平川のショートカットの茶髪と、変な色の爪、それから短すぎるスカートという格好を見ていると、真面目な桃野と合うとは思えないのだが。似てないからこそ、仲良くなれるものなのかもしれない。  とにかく。
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