嘘つき、嘘に溺れる

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「なんでいつもいつも、俺の席を使うんだよ。自分の席を二人で使えばすむ話だろうに」 「だって、机一つじゃ狭いんだもん。まったく、このくらいでカリカリして……」  平川は口を尖らせた。でも、目が笑っている。俺はこいつにおちょくられているんだろうか。 「私に机使われたくなかったら、一限目から学校に来たらいいだけでしょ。なんで毎日遅刻するのよ」 「知るかよ、秀に聞けよ」  秀の名前を出した途端、平川の表情が曇った。 「椿木(つばき)ねえ……。椿木って、なんで美希と付き合ってるの?」  それこそ、知るかよ、だ。 「絶対断ると思ったから、告白頑張れって背中押して送り出したのに……」 「どんな友達だよ……」  まあ、わからないでもない。本当に大事な友達が、秀とくっつくのは勘弁という気持ち。いくら桃野が秀にベタ惚れであっても、だ。  平川は少しだけうつむいたが、すぐに顔をあげた。 「……あのね、岸本。最初に言っとくけど、美希泣かせたら許さないから」 「……俺に言う意味は?」 「椿木って日本語通じるか怪しいんだもん」 「……よくわかっていらっしゃる」
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