嘘つき、嘘に溺れる

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 ため息をついたら、すれ違った女子の髪から懐かしい匂いがして、思わず振り返った。翻る茶髪に、なんだ、とがっかりする。……当たり前だけど、別人だ。だけど、匂いっていうのは、なんでこんなに思い出を刺激するんだろう。  足を止めてしまった俺の服の袖を、秀が引っ張った。 「空!」 「な、なんだよ! いきなり大声出すな!」 「香水、同じだからって、同じ人じゃないのにっ、バカみたいだよ!」  お前なんかに言われるまでもなく、そんなことはわかってるんだよ。だけどそんなもん、仕方ないだろ。条件反射みたいなもんだ。 「バカ!」  秀はまた俺を怒鳴って、大股で歩きだした。情緒不安定な奴だ。俺はもう一度振り返って、梨子がいないことを確認してから――それこそバカだけども――、秀のあとを追った。
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