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秀はあたりをキョロキョロと見回し、それから、植え込みに駆け寄った。
「猫!」
ガサガサと植え込みから音がして、現れたのは、秀の言うとおり猫だった。三匹。三匹?
「増えてるじゃねーか」
この間までは二匹だったはずだ。
「そうなんだよ。今朝来たら、増えてて、まいったよ」
あはは、と軽く笑う史人は、全然まいっているように見えなかった。呆れる。
かがんだ秀の足元に擦り寄る猫たち。黒いのに、白いのに、灰色の新入り。こいつらは皆野良猫だ。史人が飼っているわけじゃない。何度かほかの職員に注意されているのを見かけたが、史人はその場では謝るくせに、猫に餌をやるのをやめようとしなかった。
俺は猫も犬も、むしろ動物自体がそんなに好きじゃないから、秀が甘える猫を撫で回すのを、少し離れて見ているだけだ。秀の方は猫好きで、猫と戯れているときだけは、落ち着いているように見える。だから一度、秀の両親に、猫を飼ってみてはどうかと提案した。けれど、秀が世話をできるわけがないという、至極真っ当な理由で却下された。
と、秀が唐突に口を開いた。
「姉ちゃんは、猫を触りにきたり、しなかった?」
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