嘘つき、嘘に溺れる

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 雨が苦手なのはお互い様なのに、こいつは。  俺は込み上げてくる苦い思いもため息も呑み込んで、ベッドの上の膨らみを見つめる。 「しゅう」  幼馴染の名前を呟いたけど、返ってくるのは呻き声だけ。窓の外からは雨音が聞こえてくる。 「またやったのか」  返事はない。俺は携帯を出して時間を確認する。そろそろ行かないと、遅刻だ。ブレザーのポケットに携帯をしまいこみ、秀(しゅう)を揺する。 「おい。聞いてんの?」 「……してねえよ、なんにも」  秀がようやく返事を返した。布団の中から聞こえてくる、くぐもった声。いつものことだと自分に言い聞かすけど、それでもやっぱりイライラする。 「起きてんじゃん。早く支度しろよ」 「僕、今日は体調悪い」  ふざけたことを言う。秀の体調が悪いのはいつものことで、おまけに自業自得なのだ。 「そうか、わかった。じゃあ早く支度しろ」 「聞けよ」 「おまえの具合が悪いのは、薬のせいだろ、馬鹿が」
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