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覚醒剤とかそういうもんじゃない。睡眠薬とか向精神薬でもない。ただの、痛み止め。高校生のお小遣いで簡単に買えてしまう、頭痛薬。
「してないって」
秀はふてくされたように言う。
もう、返事をする気にもなれない。なんで俺がこいつなんかのために遅刻しなきゃならないんだ。
「置いていくからな」
吐き捨てて、それでも布団から出てこない秀のことを見捨てて、俺は部屋を出た。が、出てすぐのところで、秀の母親につかまった。
「秀は起きた?」
開口一番、おばさんはそう言った。俺は無理やり笑顔を作って、首を横に振った。
「いいえ、起きませんね。体調が悪いらしいです。午後からなら行けるんじゃないですかね」
「そう……でもそれじゃあ、今日も遅刻ね。……空(そら)くん、お願いできる?」
すがるような目で見つめられて、俺はぐっと詰まった。もう何回目だろう、秀に付き合って昼から登校するのは。秀は成績が良いからまだ大丈夫だけど、俺は成績が悪い。内申点をよくするには、無遅刻無欠席が一番、なんだけどな……。
だけど俺は、この人の頼みを断ることができない。
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