JK幽霊の暇つぶし

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 日がある時間帯に私に出来るのは、ちょっと物を押す程度。夜の学校だったら、物は触れるし動かせるけど、誰もいないところでそんなことしても、(イジメの仕返しくらいにしか)ほとんど何の役にたたない。恋のキューピッドをすると決めたものの、リボンの結び方ひとつ教えてあげられないのだから、私の能力からしても前途多難だ。  おっと、次の授業は調理実習らしい。  「和歌、エプロン持った? 教科書持っていく?」と和歌の友だちの二階堂えりが、話しかけている。お姉さんタイプの二階堂えりは、おっとりした和歌の世話をよく焼いている。  「うん、作り方を確認したいし、一応、持って行くよ」 和歌はエプロンや三角巾の入った巾着袋と教科書を手に持って立ち上がった。  二人は今朝のニュースで見た芸能ニュースの話をしながら家庭科室へ歩いて行く。人気女優と中堅のお笑い芸人が結婚するらしい。  「えーっ、あの女優さん、結婚するの?」と私も二人に話しかける。二年前にはその女優はまだデビューしたてで、高校生の役をやっていたのに、とびっくりする。まだ二十歳だ。電撃結婚と報じられているらしい。  そういえば、いつかの昼休みに、親友だった(つむぎ)が役柄と同じ髪型に私の髪を結ってくれたな、と思い出して、チクリと胸が痛んだ。(つむぎ)は卒業してしまって、美環高校にはもういない。私は頭を振って、感傷を振り払った。  紬はもう、私のいない新しい生活を送っているはずなのだから。e912b1ca-7be9-4189-82ab-5106c707f5fcイラスト:ハナ様
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