JK幽霊の暇つぶし

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 そして今度は西くんの周囲を飛び回り、「三浦さん、前髪変わった! 前髪! 三浦!」と繰り返し耳元で叫ぶ。十回ほど叫び続けたところで、やっとくるっと体を回し、和歌の方に振り返った。けれど西くんは、和歌の前髪が変わった事を確かめると、何事もなかったかのように、また前に向き直ってしまった。    和歌も私もがっかりしてしまった。いつもの前髪を変えるだけでも、ちょっと勇気が必要なものだ。  「まあ、男の子なんてそんなもんよ。気にしない気にしない。和歌、可愛いよ!」 私は和歌の背中をぽんぽん叩き、和歌の気持ちを引き立てる言葉を叫ぶ。  よし、それなら次の作戦だ。私としてはかわいいリボンの結び方を教えてあげたいけど、どうやって伝えたらいいのか分からないから後回しだ。野暮ったいスカートの長さからいこう。こちらは簡単。ウエストをクルクル折り込めばいいだけだ。さっそく和歌の耳元で叫ぼうとしたが、和歌は何かに気をとられているようだ。視線をたどると西くんだ。それはいつものことだが、今日は西くんの右手の指に包帯が巻かれていた。  (そういえば、昨日の体育はバスケットボールだった。もしかすると、その時に怪我をしたのかもしれない)と思い当たる。  私は和歌のために情報収集することにした。西くんの側に浮かんでいると、西くんにクラスメート達が次々に話しかけているのが聞こえる。  「昨日のバスケで…」
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