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(私、「ごめんね」も伝えられないんだな……)
ないはずの心臓が、雑巾をぎゅっと絞ったみたいに苦しくなる。
「でも西くんが困らなくてよかったよ」和歌が小さくつぶやいた。
私はハッとして和歌を見た。
(和歌、私に返事した?……まさか……ね?)
死んでしまってから今まで、誰にも私の声が聞こえたことはなかったのだから。気のせいだといくら自分に言い聞かせても、二年間誰とも言葉を交わしていなかったので、ただの偶然だと思ってもジンとしてしまう。
(それにしても、和歌は自分のノートを貸してあげたかっただろうに、西くんが困らなかったからよかったって言っていたな……)
ふいに和歌の言ったことが耳によみがえってきた。なんていい子なのだろう。もし生きていたらぜひ友だちになりたいタイプだ。
でも……、もしかして。和歌に私は見えないかもしれないが、私が和歌を友達だと思ってもいいのかもしれない。和歌と一緒に過ごすうちに、私は和歌が好きになっていた。一方的だとしても、私が和歌を大事に思う気持ちは本物なのだから。
友達だと思っても……いいよね……?
(よし! ノートの他にも、何か和歌が西くんを手伝えることがあるかもしれない!)
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