JK幽霊の暇つぶし

26/57
前へ
/57ページ
次へ
 「和歌、そのくらいの丈の方がいいよ。可愛い」  それでも言わずにはいられない。私が和歌の変化にひと役かったのは確かだ。たとえ、私しか知らなくても。口に出して和歌を褒めると、やっぱり口惜しさよりも嬉しさが増してきた。野球だってサッカーだって、応援しているチームが勝ったら嬉しいじゃないか。それでいいんだ、と自分に言い聞かせた。そう思うのに、その場にいて和歌とえりを見続けるのはいたたまれない。  「西君に和歌のスカートの事を教えなきゃ」と私は呟いて、西君を探しにふわりと浮かび上がった。  西君は昇降口にいた。靴を左手で出したものの、包帯で巻かれた右手が使えないので靴が履きにくそうだ。一緒にいた友達が「なにやっているんだよ」と軽口を叩きながらも、西君の鞄を持ってあげている。  靴を履こうとかがんでいる西君の丸い背中に、私はそっと寄りかかった。 (どうか重くありませんように)和歌に水をかけた男子の時とは逆の事を願う。(そして冷たくて驚かせませんように……。ほんの少しだけ、靴を履く間だけ、寄りかからせて)  「ありがとう」  西君の声にはっとした。見上げると、西君は待っていてくれた友達に顔を向けていた。私への「ありがとう」じゃなかった。だけど西君のありがとうは温かくて、いつまでも耳に残った。また聞きたいな……とふと思う。 9e244dc5-00f6-41e6-aeed-b28b8a387a07イラスト:ハナ様
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

68人が本棚に入れています
本棚に追加