JK幽霊の暇つぶし

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 恋したいね、って話したこと。そしていつか好きな人が出来たら、うまくいくようにお互いに協力しようと指切りして写真を撮ったのだ。  私はくすくす笑った。あの時の不思議な高揚感に包まれていた。  ねえ、紬。紬のおかげで、私の高校生活はとても楽しかったよ。  それに、私が怨霊にならなくて済んだのは、やっぱり紬のおかげ。全身が黒く染まっても、紬とつないでいた右手だけが黒くならなかったのは、大好きな紬を助けたいと私が願っていた証拠だと思う。大好きな人でいてくれて、ありがとうね。  私が私を好きでいさせてくれて、ありがとう。  もっと生きたかった。それは本当の気持ちだけど、紬を助けられてよかった。それも本当の気持ちだって言える。  だから、ねえ、笑ってよ、紬……。そのためなら……。  「私に助けられた記憶なんて、忘れちゃっていいよ。紬の辛い記憶、私がもらってあげる。だから自分の代わりに私が死んだ、なんて思わないで。 それにね、私のお父さんもお母さんも、もし本当のことを聞いたら、私の事を誇りに思うよりも紬の事、恨んでしまうかもしれない。そうなったら、お父さんとお母さんは、紬と私の話が出来なくなっちゃうかもしれない。それは悲しいから。 紬、お願い。お父さんとお母さんが知らない私のこと、教えてあげてほしいんだ。もう思い出を増やしてあげられない私の代わりに……。 だからお父さんとお母さんは、事故のことは知らない方がいい。 自分の身代わりになって私が亡くなった、なんて紬は言わなくてもいいんだよ」  私は目をつむって、自分の気持ちを見つめた。悪霊にはなりたくない。だから自分の気持ちに嘘をついてはダメなんだ。  紬をかばって死んだこと、紬に覚えていて欲しい気持ちもある。ありがとうって思っていてほしい気持ちもある。でもたぶん、紬は喜べない。後ろめたい気持ちを抱えて生きていくことになる……。私が死んでからの三年半、苦しみ続けて来たことからも、それははっきりしている。
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