JK幽霊の暇つぶし

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 私は紬の家を出て、ゆっくりと歩き出した。二年間学校に引きこもっているようなものだったので、見慣れているはずの風景も新鮮だ。ところどころ記憶にはないお店や家が建っている。  私は初めて来る場所のように、周囲をじっくり見回しながら歩いた。  「あれ? ここって何があったんだっけ?」  私が死んでから新しく出来たのだろう。今は時間貸しの駐車場になっているが、以前は違ったはずだ。しかし何の建物が建っていたのか思い出せない。 「誰かの家……だったかなあ」と思うが、どんな建物だったのかは思い出せなかった。「なくなると、すぐに記憶から消えちゃうんだな……」胸がチリッとひりつく。  T字路に差し掛かった。私の家は左だ。  「どうしよう……」 少し迷ったが、せっかく外に出てきたのだ。家に帰ってみたい。美環高校からのいつもの帰り道を歩いていると、後ろから自転車に追い抜かれた。  「あっ、お母さんっ」  懐かしい青いチェックの服。二年前も着ていた。 「お母さん、物持ちがいいんだから」といいながら、自転車の後ろの荷台に飛び乗った。  幽霊だから、二人乗りはだめですよ、なんて警察官に咎められる心配はない。お母さんの腰に腕を巻き付ける。いつもの服にお母さんの匂い。私が死んじゃってから二年も過ぎたなんて嘘のようだ。  家に着くとお母さんは、自転車のスタンドをガシャンと立てた。前かごから買ってきた物で一杯のショッピングバッグを「よいしょ」と言いながら持ち上げる。私も一緒に持つ。ほんの少しでも軽くなったらいいな、と思いながら。  玄関を開けると、ショッピングバッグをテーブルに置き、中から買ったものを出していく。
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