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「あっ、私が好きな牛のマークのミルクスフレプリンだ!」
久しぶりに食べたくてソワソワする。なんとかして食べられないだろうか? プラスチックのカップの縁から盛り上がっている卵色の生地が、ふわふわでとても美味しいのだ。
お母さんの周りを飛び回ってアピールする。お母さんはスフレプリンをそのままにして、買ってきた肉や牛乳、卵、などを次々に冷蔵庫にしまっていく。アピールに気が付く様子は全くない。
「もう! 娘が二年ぶりに帰ってきたのだから、ちょっとくらい気付いてくれてもいいんじゃないの?」と私は頬を膨らませた。
ショッピングバッグが空っぽになっても、テーブルには牛のマークのミルクスフレプリンが残されている。
「ははん。さてはお母さん、そのスフレプリン、おやつに食べるつもりですね?」
探偵気分でお母さんに話しかける。ところがお母さんは、プリンを手に持って歩き出した。どこへ行くのだろう? 不思議に思いながら付いていくと、両親の寝室に見慣れないものがあった。私の仏壇だ……。
「今日はね、牛のマークのミルクスフレプリンにしたよ。好きでしょ?」
お母さんは私の仏壇からパリパリ焼きシュークリームを下げて、ミルクスフレプリンを供えた。
「要冷蔵だから、長くは置いておかれないからね。早く食べちゃいなさいね」と仏壇の写真に話しかける。写真の中の制服の私は大きな口を開けて笑っている。私が気に入っている写真だ。
「食べられないよ、お母さん……。だって私、幽霊なんだもん」
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