JK幽霊の暇つぶし

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 もしかするとこれが走馬灯というものだろうか? 急な事故で死んでしまった私には死んだ時の記憶がなかった。気が付いたら幽霊になって学校に漂っていたから、走馬灯というものを見るのは初めての経験だ。  思い出のフィルムが弟が生まれたところまで来ると、急にエレベーターの上昇が止まる時のような感じがして停まった。おそるおそる目を開けてみると、弟の左肩の上に浮かんでいた。学校帰りなのだろう。友達と歩いている。  「うわ。たったいま赤ちゃんだったのに! なんだかおっさんになったなあ」とクスクス笑う。  つるんとした卵肌の赤ちゃんは成長し、今や耳の下に剃り残しの髭まである。背も五センチは伸びているような気がする。テニスのラケットが入ったケースを肩にかけている。生きている時はお母さんと一緒に試合を見に行った。 「見に来ないでよ」と言われても、こんなことになってしまったのだから、見ておいてよかったというものだ。今はあの頃よりも、きっともっと強くなっているだろう。   友達と楽しそうに笑っている弟の耳を引っ張って叫ぶ。  「お父さんとお母さんをよろしく頼むね! 結婚するなら性格のいい娘を選ぶんだよ!」  弟は耳をカリコリ、と掻きながら、空を見上げた。
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