JK幽霊の暇つぶし

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 「ごめんね、まだ空にはいないんだ。ここだよ!」と話しかけて、頭を撫でる。 まだ弟が小さい時、やっていたみたいに。そして頬っぺたを摘まむ。弟の柔らかなほっぺたの感触が好きで、お母さんに隠れて齧ったりして泣かせた事もあったっけ。でも弟の頬は、もうあの頃のようにふにふにじゃない。  「頼もしくなったじゃないか!」 ちょっとお姉さん風を吹かせて、偉そうに頼む。でも本当は手を合わせてお願いしたい。  「お父さんとお母さんより先に死んじゃダメだよ! もし先にこっちに来ても、追い返すからね。私の分まで長生きするんだよ!」  言いたいことを言ってしまうと、先ほどと同じような引力を感じて、気が付けばお父さんの横に立っていた。お父さんはまだ会社にいるようだ。がらんとした室内にはもうお父さんしかいない。自分のデスクに座って、目を瞑ってこめかみを揉んでいる。会えなかった二年間で、ずいぶん白髪が増えたみたいだ。  「お父さん、目が悪いもんね。疲れ目かなあ」  私は冷たい手をお父さんの瞼にあてた。ひんやり、気持ちがいいだろう。だけど、疲れ目の場合、温めたほうがいいのかな? と心配になって、お父さんを覗き込むと気持ちよさそうにしていたので、少しの間そのままにしておいた。
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