JK幽霊の暇つぶし

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 私とお父さんはとても仲が良かった。小さい頃からよく遊んでもらったし、勉強も教えてもらった。友達には言えないけれど、お風呂も小学校五年生くらいまで一緒に入っていたし、一人で寝るのが嫌で、中学二年生まではお父さんとお母さんと一緒に寝ていた。お母さんは夜更かしだから、お父さんと先に寝室に行くのが習慣だった。  ブーンっとモーター音がひくくうなった。スリープモードになっていた何かの電子機器が動き始めたのだろう。  「お、あの子がもう帰れって言っているのかな?」とお父さんが言った。    もちろんそんなことは言っていない。そして私が機械を操作しようとしたら、壊れてしまうので何も触ってもいない。  けれど、もしかしたらお父さんは、私がいることに気が付いたのだろうか。霊感があると聞いたことはなかったけれど、お父さんだって秘密のひとつやふたつ、あってもおかしくない。  「いいこと、思いついた!」  夜になって少しパワーアップしている私は、お父さんの机の上の写真立てをつついた。私も映っている家族写真が飾ってあったから、わかりやすい挨拶だろう。  写真立てがカタカタカタ…と音を立てて揺れ、パタンッと倒れた。  「おわっ!」と、お父さんが叫んで、のけぞる。    「わたしだよ、お父さん!」と耳元で叫ぶ。お父さんに霊感があるのなら、聞こえるはずだ。    ところがお父さんは「な、なんだよ。本当にもう帰ろ……」と言って、体をぶるるっとふるわせ、そそくさと机の上の荷物を片付け始めた。  「あれれ?」  なんだか肩透かしを食らった気分だ。ここは「来てくれたのか?!」とか言って、喜ぶ場面じゃないの?
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