JK幽霊の暇つぶし

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 「おーい、なにかいたら、守ってくれよー」  お父さんは手でメガホンを作り、空間に向かって話しかける。  「えーっ、それって私に言っているの?」  なんだかおかしな感じだ。脅かしたのは私なのに、助けをもとめられるなんて。   「なんだ、やっぱり、霊感なんかなかったんだ。もうお父さんたら紛らわしいんだから!」  もしかしたら、お父さんに「帰ってきたよ」と教えられるかもしれないと思ったのに残念だ。  だけど……。学校にいる私には届いていなかったけれど、お父さんはいつも私に話しかけてくれていたんだ……。もし成仏したら、お父さんが私に話しかける声がいつでも聞こえるのだろうか。  お父さんには聞こえないけれど、そして、ありきたりな言葉しか出てこなかったけれど、全身全霊で(体はないけれど)お父さんにありがとうの気持ちを込めて抱きついた。  「お父さん、今までありがとう。お父さんの娘でよかった……」  お父さんは伸びをひとつすると、鞄を持って立ち上がった。さっきよりも目がほんの少し大きく見える。少しは疲れを取ってあげられたのかもしれない。私は満足して浮かび上がった。  せっかく外に出てきたのだから、思い出の場所に寄りながら、ゆっくり学校へ戻ろう。  生きている時の友人たち。プリクラをよく撮った思い出の場所。たまに立ち寄っていたファミリーレストラン、嫌だけど頑張っていた塾。そしてもちろん、紬とよく言っていたドーナツ屋さん。  「思い出の場所なんて、たいしてないもんだなあ……」とため息をつく。今後生まれるときには、回りきれないほどたくさん、思い出を作ろうと思う。
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