JK幽霊の暇つぶし

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 朝日が昇るころ、私は学校へ戻った。いつものように校舎の真ん中に位置する窓から、登校してくる子達を見守る。窓から身を乗り出して、登校してくる皆に挨拶しようとして気が付いた。  (あれ? どうしたんだろう?)  幽霊になってからというもの、怪我はもちろん病気だって、風邪ひとつ(かか)ったことはない。つまり体がおかしいと感じたことはなかったのだが、今朝はなんだかおかしかった。  (自分の体がないような……)  まあ実際ないけれど、それでも今までは幽霊なりの(からだ)感というようなものがあったのだ。でも今はその体の感じが、希薄なのだ。意識はある。移動もできる。でも……。  私は自分の両手を開いて見た。いつもよりも透けている、ような気がする。  (もしかしたら)と、思い当たったことに、ひやりとする。(もしかしたら、私、もうすぐ消えちゃうのかな?)  それを成仏というのなら嬉しい事なのかもしれない。両親もその方が安心だろう。成仏したら天国で楽しく暮らすのか、また生まれ変わるのかは分からないが、美環高校からはもう卒業するということだ。  ……でも私はまだ和歌の恋を応援していたい。そして…、あと少しだけ西くんのそばにいたい。と、そこまで考えて気が付いた。  (あ、そうか。私…。私、西くんが好きになっていたんだ。幽霊なのに。一度も目が合ったこともない。それどころか、西くんは私の存在さえ知らないのに)
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