JK幽霊の暇つぶし

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 幽霊の私の涙が、ほろりと零れて空気に溶けていく。窓から差し込んだ光が私の涙をキラキラ映している。  西くんのありがとうという声を思う。その声の感じが好き。右手が使えないから、左手で食べにくそうにお弁当を食べている横顔が好き。  西くんが不味い豚汁を食べて、「おいしいよ」って言った時の正直すぎる顔と、優しさが好き。西くんと一緒にいるときの、ただそれだけの、その感じが好き。  視線が合うことがなくても、触れられなくても、声を届けられなくても……。 好きだよ。  涙がどんどん空気に溶けていく。涙は私の体。私の体が涙になって、どんどん溶けていく。  西くんへの恋に心がしめつけられるようなのに、同時に溶けていく体が私に訴えかける。  (まだ消えられない。あとひとつだけ。和歌に。私の友だちに……)  和歌だって私のことなんか知らない。私は幽霊なのだから当たり前だ。だけど私しか知らない気持ちなら、私が大事にしてあげなかったら本当になかったことになってしまう。もう最期なら、私だけは私の気持ちを大事にしてあげよう。  窓の下を賑やかに登校してくる生徒達の中に、和歌を探す。  (いた! ピンでナナメに留めた前髪、少し短くなったスカート。でもやっぱり、胸のリボンはギュッと固く小さく結びすぎ)
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