JK幽霊の暇つぶし

48/57
前へ
/57ページ
次へ
 二階堂えりと二人で校舎に向かってくる和歌を見ていると、クスクスと笑いがこみあげてきた。こんな時でもいつもと同じ和歌に安心した。私は和歌の耳元でささやく。  「東館の三階の踊り場には、鏡がある。ちょっと行ってみようよ……。胸のリボンのかわいい結び方、教えてあげる」  耳元で小さくささやいただけ。いつものように何十回も叫んだわけじゃない。だけど和歌は上履きに履き替えると「ねえ、ちょっと先に行っていて」と二階堂えりに言った。「どうしたの?」と聞くえりに、「ホームルームには間に合うようにもどるから」と答えると、小走りに東館に向かった。短くなったスカートが軽やかにひるがえる。  私は和歌と手を繋いで、隣を走る。二人のスカートが同じようにひらひら揺れる。  連絡通路を抜けたところにある東館は、美術室や家庭科室などに使用されている。一般の教室はないので、朝の登校時間にはほとんど人は来ないのだ。がらんとした三階の階段の踊り場には、大きな鏡が壁に貼ってある。その前に立つと和歌の全身が映った。  「んー。リボン……。うまく結べればいいのに……」和歌がつぶやいた。  「教えてあげる。練習してみよう、ね?」と言って和歌の手を持ち、一緒にリボンを引っ張った。 スルッとリボンがほどける。私の透けている手が、もう時間がないと訴えている。(待って、あと少しだけ。お願い……)と頭の片隅で祈る。 aee287d7-4822-4565-840b-0eeeca57afa1イラスト:ハナ様
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

68人が本棚に入れています
本棚に追加