JK幽霊の暇つぶし

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 「ありがとう。和歌……」  もう、ほとんど空気に溶けてしまった私は、和歌を取り囲むように包みこんで抱きしめた。和歌と私は教室に入っていく。  西くんが和歌を見る。いつもとちょっと違う和歌を見て「あれ?」というように、首を傾げる。私は西君の耳元で「おはよう!」と叫んだ。西君は「おはよう」と反射的につぶやいてから、和歌と顔を見合わせると、どちらからともなく笑顔になり、もう一度「おはよう」と言葉を交わした。  私には西くんと和歌の心がピョンッと跳ねたのが分かった。それを見るとキュッと胸が痛む。  でも……、でもね……。  私は自分の小指を見た。紬と交わした約束。「いつか好きな人が出来たら、協力すること」は、これで果たせたっていうことでいいかな?  そう思うと、胸の痛みが和らいで体が軽くなった気がした。  「よかったね、和歌。ありがとう。そしてさようなら、西くん」  そう言うと、ほんの少し残っていた私は、最後の涙になって、はじけて、消えた。  
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