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貴 子
「朝起きて、海が見えたら
一日が爽やかでしょ?」
君の勝手な理屈に押されて
知多半島に構えた家。
子供たちも巣立ったことだし
君との第二の人生のための贅沢、
(結婚三十年記念のプレゼント、
・・・ってことで、いいか)
そんなつもりで購入。
「海が今日も綺麗よ」
おはよう代わりになった君の言葉・・・。
今朝も聞かせてくれよ、
もうすぐ夜明けじゃないか、
あと五分、あと五分・・・
目を開けていて欲しかった。
貴子・・・五分どころか、
もっともっとこの家で
君と朝を迎えたかった・・・。
君が逝った今朝も・・・
爽やかな風は
僕たちの家には訪れる・・・。
- 了 -
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