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しばらくしげしげと唐揚げだという黒い塊を眺めて、口に運ぼうとするとグイッと手を引かれた。
「あ、おい」
「……嘘つきぃ」
俺の手から唐揚げを奪いひょいと口に入れると、驚いたように目を見開いてから、唐揚げを口に入れたまま、彼は怒ったのかじっとりと俺をねめつけた。なんだか罰が悪くて、視線をそらしてしまう。
「まっっずいじゃん!!なにこれ、炭!?ってくらいにっがいじゃん!なんで言ってくんないの!」
「いや……」
「まずいならまずいって言ってよ!」
「お前が初めて作ったのに、そんなこと言えるか」
「そんなの関係ないじゃん!そりゃ、味見せずに出した俺も悪いけど……っ」
「いや、そうじゃなくて」
そういうことではなくて。
少しだけ涙目になってしまった彼を見て、どうしたものかと頭をかく。けれどここは素直に言うのがきっと一番だ。
はあっと息をつくと、びくりと彼の肩が揺れて、あぁしまったと思う。怖がらせただろうか。もしくは不安にさせたかもしれない。
「なあ」
「……なに」
「あー……俺は結構打算的な男だからさ」
「知ってるけど」
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