34人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
「あんたとじゃ未来が見えない」
志保は冷たい目で僕に言った。
大学一年の頃から続く六年のつきあいが、終わった。
彼女は大手広告会社のクリエイター、僕は一浪で入学した大学で、二回留年してまだ卒業できていない。現時点で就活も全敗だ。
志保が僕に見切りをつけたのも無理はない。
でも今年こそ卒業するつもりなんだ。もう少し時間をくれないか。
「あと5分で卒業できるとかじゃないでしょ? もう待てないの」
「そんな……」
「その自信なさげな口調がイライラするの!」
そう言い捨てると、志保は僕に背を向けて歩き出した。
苦笑いしか浮かばない僕が空を見上げると、一面、星が輝いていた。
「星降る夜ってこんな空を言うのかな……」
流れ星がいっぱい流れるから星降る夜って言うんじゃない、と教えてくれたのは志保だったなーと思いながら、僕はフラフラと歩く。
「危ない!」
その声は誰の声だったのか。
右から何かのライトが僕を照らす。眩しさを堪えて右を見ると、視界いっぱいに広がるものが見えた。
トラックだ。
そう思ったときには遅かった。
生きてきた中で一番の衝撃が僕の全身を襲った。黒と白と黒と白……、何度か世界が反転したような気がした。
最初のコメントを投稿しよう!