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2 黒の女王
時は中世に遡る。
当時、大陸から数千km離れた孤島に一つの王国が築かれていた。
その国の名は「黒王国」。
そこは一風変わった女王が国を治めていた。
彼女の唯一の趣味は、化粧でもない。宝石集めでもない。
はたまた、美術鑑賞か?いや、違う。バーベキューだ。
どこでどのように学んだのかは定かでないが、
準備から調理、実食まで全てが完璧だったらしい。
そして、彼女はある年の夏、自らバーベキューパーティーを企画し、
ついには開催するに至った。国を挙げての一大イベントである。
全国民が王宮の敷地に集まり、パーティーは始まった。
皆が皆、銘々に仲間と一緒に楽しんでいる。
しばらく経った頃、宮殿の扉が開かれ、女王が姿を現した。
煌びやかな漆黒のドレスを身にまとい、
それはそれは絶世の美しさだったと言う。
彼女はすぐに近くの若い男女4人組の中へ入り、奉行役を買って出た。
寸分狂いのないバランスで具材を串に刺し、絶妙なテンポで焼いていく。
火が少し弱くなったかと思うと、必死の形相で扇ぎ、火力を復活させる。
腹がある程度満たされ、4人の若者が暇を持て余しかけたときには、
「何をぼさっとしていますの。古今東西ゲームやりますわよ。
お題は『白鳥がジャガイモを喉に詰まらせたときに言いそうな言葉』です。
では、私から。はい、クエー!」
ユーモアも申し分ない。生粋のエンターテイナーだ。
一部始終を見ていた国民は呆気にとられ、自然と拍手していた。
しかし、この平和な世界は長くは続かなかった。
突然、海岸の警備に当たっていた見張りが息荒く駆け込んできて言った。
「敵襲です! 白王国の軍勢が攻めてきました!!」
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