ブルー・マエストロ ~最後の5分~

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 『33番! ミッドフィルダー! 矢越ィィィィィ!! 達生ォ!!』  場内にそのアナウンスが轟くと、スタンドを埋め尽くす熱気溢れる観客のテンションが最高潮に達し、一際大きな歓声がアナウンスを掻き消すように場内に響き渡った。  青藍色ユニフォームの横濱インディゴシティFCと白色ユニフォームの静岡いずユナイテッドFCのスタメンを務める双方の選手達がエスコートキッズと共に整列してメインスタンド中央下部の選手入場口からピッチの上に現れた数十秒後、矢越ら控えの選手達や監督である監物茂とコーチ陣もピッチの脇に現れた。そのスペースにはピッチに入場してくるスタメン選手の姿を写真に収める為に陣取っていた多くのカメラマンがすでにいたが、一部のカメラマンはスタメン選手に続いて出てきた矢越のもとに慌てて駆け寄り、急いでその姿をカメラに収めた。  まあ、そうだよな……こうなるよな――この試合が行われる数ヶ月前の秋前に引退発表をした矢越は、自身の前を埋め尽くすかのように迫る多くのカメラマンの姿を見て、納得していた。
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