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「桜はもうないけど、この中庭の景色……僕はホッとする」
工藤様が、ポツリと言った。
「ありがとうございます。この中庭には、たくさんの花々が飾られていて、お客様にゆっくりと談笑していただける安らぎの空間を目指しております」
「そうだね。広々とした芝生、色とりどりの花々、等間隔に配置されたテーブルと椅子。ここに座っていると不思議とアイデアが湧いてくるんだ。部屋にいてダメな時は……良くここに来てる」
「はい、存じ上げております。すごく嬉しいです」
工藤様、今日は穏やかな表情をしている。
魅力的な笑顔は、やはり素敵だと思う。
私は、アデルのことを伝えた。
工藤様はとても喜んでくれ、アデルに会いたいと言ってくれた。
でも次の瞬間、また少し顔がこわばった。
「総支配人もいなかったね。松下さんと一緒にフランスに行ってたんだね。そっか、君達は恋人同士っていうわけだ……」
「工藤様……」
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